それまで泣くのを我慢していたけれど、夫に伝えながら涙がこぼれた。
普段は滅多に泣かない夫の目もみるみる赤くなり、2人して泣いた。
本当はすぐにでも心菜のもとに一緒に行きたかったけれど、泣いている私たちの真ん中には1歳8ヵ月の息子がいる。
まずは息子の環境を整えなければいけない。
息子は私の実家にお願いすることにしよう。
息子だって大事な子供。この子だって守らなければならない。
なにかあってはいけないので
「気をつけて安全運転で向かってね。」
と動揺しているだろう夫に伝え、私の実家に向かってもらった。
夫を見送ってからすぐに実家の母に連絡をした。
母は心臓が弱く、数カ月前に心臓のカテーテル手術もしているから慎重に伝えなければいけない。
電話にでた母に
「落ち着いて聞いてね。」
と前置きをして、ゆっくりと丁寧に、心菜の事を伝えた。
母とはここ数カ月、心菜の様子がおかしいことを共有していた。
「気をつけて様子をみててあげてね。」
とも言われていた。
だからなのか大きな動揺はないように感じた。
でも、泣きながら
「そうか。そうだったんだね…」
と言った後は言葉を失い、大きなショックを受けているのは分かった。
でも止まってはいられない。
今、夫が息子を乗せて実家に向かっていること
入院準備やその他は夫が動いてくれるようになっていること
おそらくしばらくは息子がお世話になること
それらを伝え電話をきった。
次に病院へ送りだしてくれた義理母に電話。
はっきり記憶はないけれど、それまでの経緯を伝えたら義理母がショックを受けていることは感じた。
全ての連絡を終えた頃、看護師さんが玄関まで私を捜しにきた。
「ここなちゃんがもう限界で泣いています。」
そんなことを言われたと思う。
そうだよね。
自分の身体が思うように動かなくなって
車椅子に乗せられて
初めてきた病院でママが離れちゃって
不安だよね。
ごめんね。
娘に涙を見せるわけにはいかない。
私はこぼれ落ちる涙をふいて、大きく深呼吸をして、気合を入れて
心菜のもとへ帰った。