2019.8.8【確定診断と夫のことば】

病状説明と今後の話

いわゆるIC=インフォームドコンセントの日。

心臓が口から飛び出そうなほどの緊張感でこの時を迎えた。

ICには夫と私と、緊急入院の日と同様に私の兄にも同席してもらった。

病院側は主治医とチームの医師と看護師長と担当の看護師さん数名が揃い、ものものしい雰囲気だった。

結果からいうと最も最悪な病気

「びまん性正中グリオーマ」

分かりやすくは脳幹部グリオーマ、グレード4の悪性神経膠腫。

心菜の場合は典型的な「橋」発症だったので

diffuse intrinsic pontine glioma = DIPG

生検された腫瘍からは「H3-K27M」の遺伝子異常が見つかり

世界中どこをさがしても “完治” にいたる治療法がない病気だった。

生検手術の直後に簡易の病理結果の話があり、期待をもってしまっていた分ショックはより大きい。

期待を持ったからこそ、毎夜ネットで少しでも明るい情報をさがしていた。

娘は治せるかもしない

最悪な状況は避けられるかもしれない

そう信じることで自分を支えていた。

その一方でDIPGについての知識も増えていったので、病名だけで予後不良だということは十分に理解ができた。

それでも伝えられた余命

「1年生存率10%未満」

にはかなりの衝撃を受けた。

上がり下がりがあった分、まさに奈落の底に突き落とされた気持ちだった。

最悪な結果に涙がとまらない私とは対照的に静かに話を聞く夫。

「えっ」も「あっ」も感嘆詞すら発しない。

無口な夫らしいといえばそれまでだけど、恐ろしいほど静かにそこにいた。

病状説明の後も主治医の説明は淡々と続く。

・これから標準的な放射線治療をはじめること

・治療には鎮静を使用する予定のこと

・点滴は針ではなくPICCに変更し、それにより外出や外泊が可能になること

大きくはそんな話だった気がする。

苦しくて苦しくて苦しくて

誰の話も聞きたくないし、どんな話も聞きたくなかった。

そして、医師のひと通りの説明が終わったころには感情が崩壊していた私は

ながれのままに自分の想いをぶちまけた。

私の生活は子どもがいるから幸せが成り立っていること

娘と息子の2人を見ているのが最大の幸福なこと

だから娘がいない人生なんてつまらないんだということ

「心菜のいない人生なんてつまんないんだよ!!!」

気がついたら、汚い言葉を大声で叫んでいた。

誰かを責めているわけではない。

自分をコントロールすることができなかった。

あと、気持ちをさらけだすことで親の気持ちを十二分に理解してもらいたい

これから娘の治療にあたる現場の方々に誠意を持って対応してもらいたい

そんな気持ちもあった。

取り乱す私を、病院側も、夫も兄も止めなかった。

気持ちが落ち着くまで静かに見守ってくれた。

私の話に一区切りがついた時に、夫が初めて口を開いた。

話したことは二つ。

一つ目はPICCについての質問。

心菜の身体にリスクがないのかしっかり確認していた。

もう一つは病院側へのお願いだった。

「最後にひとついいですか?

嫁がずっと付き添ってくれていて、これから色んなときがあると思います。

そのときは嫁をフォローしてあげてください。」

びっくりした。

その気持ちに涙があふれた。

この人とだったら同じ気持ちで心菜のことを想っていける

この人とだったら心菜を助けられる

心からそう思った。

夫のお願いを最後に、ICは終わった。

ICの間、娘はばあばと病棟保育士さんと待ってくれていた。

本当はすぐにでも娘のところに戻りたかったけれど、泣きに泣いたその顔で戻ることもできず

クールダウンもかねて夫と病院内を散歩しながら今後の話をした。

「心菜にとっての幸せという視点を持って進もう」

「心菜の力を信じて、私たちがその源となるパワーを作ろう」

夫も私も、心菜は絶対に大丈夫だと信じていた。

散歩の後に心菜のもとに戻ったけれど、それから間もなく午後には小児慢性の手続きのために外出をしなければならなかった。

車の中で1人になったとき現実が苦しすぎて逃げ出したくなった。

現実逃避。

でもそういうわけにはいかない。

なんとか気持ちを奮い立たせ病院に戻った。

ICを含めるとかなり長い時間私と離れていた心菜が

「ママー!ママー!」

と泣いていた。

そうだ、私は心菜のママなんだ。

しっかりしないと!

強くならないと!

絶対に心菜を守らないと!

そんな強い気持ちをもって、心菜のもとに走っていった。

この日の夜は家族一丸となるためにみんなでお揃いのパジャマを着た。

入院してからは家族離れての暮らしだったので、せめてと買ってあったパンダのパジャマ。

不機嫌な娘の表情も愛しい

確定診断までは揺れ動く気持ちもあったけれど、結果を聞いて逆に覚悟ができた。

今日から私は、本当に前を向く!

そう決意した。

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