朝のこと。
「ちょっとだけ待ってってね。」
と、コップを洗うために少しベットを離れた間に、心菜が自分で服を脱いでいた!
4歳7ヵ月の女の子が自分で着替えをするのは珍しいことではないが、体に麻痺がある心菜は着替えひとつでもサポートが必要だった。
本来はなんでも自分でやりたい子。
それができる状態に戻ってきているんだと思う。
そして、脱いだだけではなく、脱いだ服はキレイに畳まれていた。
私が戻ると恥ずかしそうに、でも楽しそうに笑う心菜。
そこにあるすべてが心菜らしくて、朝から泣きそうになった。
*入院してから自然と流れてしまう涙もありましたが、どんなことも、できるだけ、心菜の前では泣かないように意識はしていました*
今日のリハビリは車イスで向かう。
入院してからは、心菜の様子や行動に一喜一憂の毎日。
「昨日は歩いたのに…」とズキンとくる胸苦しさはあったけど、色んなときがあるよね!と自分を鼓舞する。
心菜の前では、どんなことも平静を装う毎日だった。
リハビリはパズル。
初めて選んだ絵柄のパズルなのに自分の力でできた!
今日は、自ら歩くものの昨日よりは疲れている感じがある。
考えてみれば1ヵ月以上まともに動かいていなかったのに、ここ数日で歩いたり遊んだりが格段に増えた。
体重が増えている分の負担もあると思う。
筋肉痛だったり、節々が痛かったりがあっても不思議ではない。
放射線時の鎮静はいつもより効かずお薬を何回か足した。
少しでも動いてしまうと照射する位置がずれてしまうので医師も慎重だった。
その割には鎮静の目覚めが早い日だった。
明日はいよいよセカンドオピニオン。
東京まで夫と2人で話を聞きに行く。
早朝に出発しなければいけないので、心菜の付添いや息子のことは私の父と母にお願いをした。
付添の母に参考にしてもらうために1日の流れをノートにまとめる。
『9:00までにチョコを食べる』
『放射線治療出発前にどのタオルケットにするか聞く』
などなど、細かなことまで。
心菜はリハビリ出発前の9:00ごろにチョコレートを食べるのが日課だった。
鎮静のため固形物はその時間までと理解していたので楽しみにしていたし、それを本人は「がんばるチョコ」と呼んでいた。
「がんばるチョコ」は1日を頑張って過ごすための大事なイベントだった。
タオルケット選びも重要だ。
嫌いな放射線治療室に向かうときに膝にかけて、戻ってくるときは体にかけるタオルケット。
その日によって好きなものを選ぶことで気分が違う。
他にもいつくかあったが、治療を頑張ってくれている心菜にとっては大事なことばかり。
あと、母は体が不自由なところもあり心菜を立って抱えることはできないので、トイレなどのお世話は病棟保育士さんや看護師さんにお願いをした。
母の車イスは父が担当。
すべての事情を分かってくれているリハビリのOTさんにも心菜のことをお願いした。
肝心の心菜には「パパとママはお勉強に行ってくるから待っていてね。」と説明。
入院してから付添いは基本ママだったので不安はあったし、話をしても案の定すんなりとはいかなかったが、ここは心菜に頑張ってもらうしかなかった。
心菜が寝てから、明日の予習としてセカンドオピニオンの医師による『小児脳腫瘍について』の講義動画を見る。
誠実そうな人柄で安心した。
そして、主に知人との交流ツールとして使用していたSNSに、心菜の病名と現状を投稿した。
緊急入院から1ヵ月半。ジェットコースターのような日々で心身ともに疲弊し、絶望も味わい、ボロボロなときもあった。
でも、セカンドオピニオンを前に強い気持ちでいかなければといけないと思った。
「心菜を絶対に助けたい!」
そんな気持ちを込め、奇跡を起こすために皆の応援をお願いし、眠りについた。